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ガイド研修で上高地

 

皆さんこんちはー。

ジメジメした梅雨が始まっちまいましたね〜。

 

一般的にイマイチお出かけ気分ではないこの季節。

 

我々アウトフィッターにとっては雨は雨の楽しみがあるってもんで関係ないけど、お客さんが来てくれなきゃヒマーなので今回はお勉強のために日本を代表する景勝地「上高地」まで行ってきました〜。

 

 

 

上高地では日本山岳ガイド協会(JMGA)主催の「登山ガイドのための気象講座」というものを受けてきました。

 

JMGAガイド資格は3年に一度更新しなけりゃならんのですが、今回はそれの更新研修も兼ねております。

 

更新研修はファーストエイドやルートガイディングなどいろんな分野から選べるのですが、今回自分はSUPにも活かせそうなお天気の講座を選びました。

 

講習会場はガイド協会所有の超綺麗な山荘です。

 

 

 

初日は座学〜。

 

ブログ1枚目の写真は晴れているけど、実は初日はめっちゃ雨。

改めて気象講座を選んで良かったなと思ったのであります。笑

 

講師はなんとあの山専門の気象情報サービス「ヤマテン」を運営し、数々の山岳気象関連の書籍も出されている猪熊先生!

 

山をやらない人にとって猪熊先生と言えば「柔の道は一日にしてならずぢゃ!」のジゴロー先生を思い浮かべる人は多いと思うけど、こちらの猪熊先生もとっても偉大な方なのであります。

 

※今回のブログ掲載の許可は先生から頂いております。

 

 

 

初日の内容は先生の著書「山岳気象大全」でも読んで貰えればよくわかるのでここでは割愛。

2日目は初日に学んだことを活かすべくフィールドワーク。

 

「ガイドのための気象講座」なんで、当日の天気を考慮して予想されるリスクにどう対処するか?どこで引き返す判断をするか?など実践的な内容でした。

 

この日は上空に寒気が入ってくる予報で午後には雨が強くなり雷のリスクもあるだろうと予想したけど実際はどうでしょうね〜?

 

8:00に山荘をスタート。

梓川沿いには川の上流に向かってかすかな谷風が吹いていました。

 

 


8:20

河童橋から焼岳を仰ぎ見る。
焼岳にかかる雄大積雲。

積雲とは上昇気流によってできる塊のような雲。

猪熊先生曰く8時台までにこの雲が成長しているようなら天気が荒れるサインなのだとか。



8:30

常念岳の向こう側や六百山の上にも「やる気を出している雲」雄大積雲が。

雲はそれぞれに意思を持っていて、そいつにやる気があるかどうかでその後の危険度が変わってくるとのこと。

先生のこの表現はめちゃくちゃしっくりきました。

積乱雲は「やんのか?オラ!?」ってやる気満々な雲なんですね〜。



それにしても上高地は景色が綺麗すぎる〜!
この辺りを散策するだけでもめちゃくちゃ気持ちいい〜。



せせらぎにはイワナちゃんが。

こんだけ近づいても隠れないってどんだけスレてないのっ!

さすが国立公園の中で保護されてるやつは違いますね〜。

あー、釣りしたい。



おっと、今日は天気の講座でした。
本日は岳沢へ向かいます。

登山中にわずかに空が見えるところで空を観察しておくってのはとても重要です。



焼岳方面には先程までより雲がたくさん湧いてきました。

塊が全体的にまとまってきた感じ。



9:50

標高1760mくらいの見晴らしのいいところまで上がってきました。

上高地と梓川の景観が綺麗ですね〜。

このあたりでは緩やかな谷風を感じます。
この谷風が強いと上昇気流によって雲が湧いてくる要因のひとつになるそうです。

この日は西南西の風の予報でその方角にあまり高い山のない南側には雲が湧いて来ています。

さっきまでより雲底が黒くなってきてますね〜。



西穂高方面。

雲底が低くなってくるのも悪天のサイン。
この日は低くなったり高くなったりとなんとも天気の判断に迷う微妙な動きをしていました。

それと雲の色ってのは雲の高さを判断する材料になるのでとても大事なのだそう。上に水滴がたくさんあるので光を通さないから黒くなるわけで、積乱雲とかの底は確かに黒いよね。

今までも感覚的に黒い雲はなんかやだなって思っていたけど、こうして説明して頂くととても合点がいきました。

因みにこの黒さは単純にガスが濃いためで今すぐ天気が悪くなるわけではないとのことでした。いや〜難しいね!



途中、小雨がパラっと。

大粒の雨が降るようなら真上で積乱雲が発達してきているひとつのサイン。(なぜ雨が大粒になるかは猪熊先生の書籍を買って勉強してね!)

10:30頃には六百山に帯状の暗い雲が掛かっていました。ただ雲底がカーテン状になっていないので雨はまだ降っていない。



焼岳方面。

モクモクした雲の向こうに暗〜いのがきてますね。やる気満々そうであれがそのままこっちに来るとヤバそうです。

結果的にはこのあとにパラパラと雨が降った程度ですみました。そしてあの暗い雲は何処へ?

雲が尾根を越えてくるときに下降気流に乗って消えてしまうことがあるそうな。今回のはそれほど勢力が強くなかったってことですね。

雲の流れを見て上空では風がどう動いているか、今後の天気がどうなっていくかを判断するのはいつもガイド中にやっている作業。

今回のように改めて原理を説明して貰って裏付けが取れるとより確かな物になっていくのを感じます。


 

岳沢小屋の前の雪渓。

 

地形図を見ると沢の上部は扇状に集水面積が広がっているので、大雨が降ると短時間で増水する場所だということが確認できます。

 

大雨が予想されるときはこの沢を渡ってしまうのか、それとも引き返して下山するのか行動判断の分岐のひとつになります。

 

 

 

12:00 岳沢小屋に到着。

ゆっくりと空を観察しながら上がってきたのでまずまずのタイム。

 

今回は上高地から前穂高岳山頂を登って岳沢小屋に戻るというツアーを想定して、天気を考慮してどう行動判断をするのか?といったシュミレーションでした。

 

小屋から上はとても急な斜面が続き、雨が降ったりすると難儀しそうなところ。

加えて隠れられる場所がほとんどないので雷なんて来ようもんならたまったもんじゃありません。

 

もしガイドをするなら大気が不安定になる午後の行動を避けて上高地を4:00に早出して山頂に立ち、お昼には小屋に戻ってくるという想定を参加者で話し合って決めていました。

 

 

 

さっきまでどんよりだった南の空にも青空が見えていました。

想定通りに行動できて結果的にこの時間に小屋に戻れていれば全く問題なかった感じ。

 

ただ稜線はずっと雲の中だったので真っ白で眺めは残念〜ってツアーですかね。

 

 

 

んで、下山すると山頂が晴れちゃうという登山あるある。笑

「悔しい〜!」って思っても安全を考慮すればこのタイミングしかないかな?

 

今回の講習ではここで岳沢から下山しました。

 

 

 

予想に反して下山路も眩しいくらいに太陽の光が降り注ぐ。

 

「これが本当のツアーだったらクレーム出るよね。笑」などと話しながら下っていきます。

 

 

 

でも天気が悪くなるのは確かなようで、さっきまで雲はあったけどやる気を出していなかった奥穂高やジャンダルムの上にもモクモクとやる気のある雲が。

 

 

 

おお〜、なんだかヤバそうな雰囲気。

雲の上の半透明なところは寒気の影響で水蒸気が氷晶になっているかもな感じ。

 

雲の手前がモヤっているのはそうとは言えないこともあるそうだけど、雲の上側にそういうのが見られると上空の寒気の影響が強いと考えていいそうです。

 

 

 

なんだか

 

 

 

天気が悪く

 

 

 

なってきたなぁ〜。

 

 

 

あ〜遂に雨が降り出しました。

 

今回は飛騨側から西南西の風で湿った空気が流れ込み、高い山のない安房峠を抜けて霞沢岳、六百山を中心に雲が湧いていた様子。

 

岳沢は西穂高〜奥穂高の稜線に守られて天気の悪化が遅れて感じ。

やっぱり地形と風を読むのは重要ですね〜。

 

 

 

下山する頃にはさっきまでいた岳沢の天気もすっかり悪くなっていました。

 

このあと雷鳴も轟き、天気の予想が当たって皆から笑顔と歓声がこぼれる。

観光客から見れば雷が鳴って嬉しそうな変な人達に見えたと思います。笑

 

 

 

自分はというと空も気になるが梓川の綺麗な流れがとても気になりました。笑

リバーSUP的にも楽しそう。

 

そういや過去に某ガイド達がSUPで下って、その翌日に別の某ガイド達がパックラフトで下ろうとしたらド叱られて失敗したって噂を聞いたことがあります。

 

噂の真相はいかに?

 

 

 

講習は無事に終わり大雨に降られることなく、バスに乗って下山。

今回は天気の変化がしっかりと見れてとても実りの多い講習でした。

 

猪熊先生、補佐の平木ガイド、参加者の皆様ありがとうございました。

 

帰りの平湯方面は土砂降りの雨で国道沿いの久手川も濁流になるほど。

地形を考慮して天気を読む大事さを再認識。

 

しばらくは空を眺めるのが趣味になりそうです。笑